がけ条例擁壁のある土地、『問題ない』で契約していい?
がけ条例擁壁が既にある土地でも、検査済証が無いと役所では「無いもの」扱いになり、作り直しの費用が家の予算に乗ります。売主に書面で確かめる順番と、無い時の決め方を買い手の目線で説明します。
こんな方へ: 擁壁つきの土地を勧められ「問題ない」の一言をうのみにできない方 読むと分かること: 契約前に売主へ出す質問と、書類が無いときの判断の仕方
営業から『擁壁があるので問題ありません』と言われたとき、契約前に書面で確かめることは1つです。その擁壁の「検査済証」が残っているかを、不動産会社を通じて売主に書面で答えてもらってください。検査済証とは、擁壁の工事が終わった時に役所の検査に通ったことを示す証明書です。「無い」「分からない」という返事なら、擁壁を作り直す前提の見積りを建築士か工務店に出してもらいます。
その金額を土地代に足したうえで、買うかどうかを決めてください。「擁壁があるので問題ありません」は売主の目で見た感想であって、役所の審査の結果ではありません。
なぜ「擁壁がある」だけでは安心できないのか
土地に高さ2mか3mを超える段差(がけ)があると、都道府県の「がけ条例」がかかります。がけ条例は、がけの高さの2倍ほどの範囲に家を建てるなら、安全な擁壁で守るように求める決まりです。ここで役所が見るのは、擁壁が「あるか」ではなく「安全だと証明されているか」です。
その証明の役目をするのが検査済証です。高さ2mを超える擁壁は、建築基準法で「工作物」として確認申請と完了検査が要ります。宅地造成の規制区域なら、盛土規制法(昔の宅地造成等規制法)の許可と検査も要ります。
逆に、検査済証が無い擁壁は、役所の審査で「無いもの」として扱われることがあります。見た目が立派なコンクリートでも、書類が無ければ役所は安全かどうかを判断できないからです。すると、次のどれかの対策が改めて必要になります。
- 今の擁壁の内側に新しい擁壁を作る(または壊して作り直す)
- がけから離して建てる(使える敷地が狭くなる)
- 基礎を深くして家の側で支える(深基礎と呼ばれ、基礎の費用が増える)
どれを選んでも、擁壁ぶんの工事費と工期がまるごと家の予算と日程に乗ります。売主の「問題ない」は、この費用を売主が負担するという意味ではありません。
見た目が似ていても扱いが別になる擁壁の見分け方
擁壁は、許可を受けて作ったものと、昔の持ち主が積んだだけのものが、同じ顔をして並んでいます。まず見た目で種類の見当をつけ、そのうえで書類の有無を確かめます。
| 見た目 | よくある呼び方 | 扱いの目安 |
|---|---|---|
| 表面がなめらかな一枚のコンクリート壁 | 鉄筋コンクリート擁壁 | 検査済証があれば安全な擁壁として扱われやすい |
| 四角い石やブロックを斜めに積んだ壁 | 間知(けんち)ブロック積み | 許可を受けたものと、そうでないものが混ざる |
| 大きな平たい石を積んだ壁 | 大谷石積み・石積み | 古いものが多く、検査済証が無いことが多い |
| 塀に使う薄いブロックを積んだ壁 | コンクリートブロック積み | 高さのある土留めとしては認められないのが普通 |
検査済証があるかどうかは、見た目からは分かりません。同じ間知ブロックでも、許可を受けて作った擁壁と、昔の持ち主が積んだだけの土留めがあります。だから見た目は「当たりをつける」までで、決め手は書類です。
もう1つ、擁壁が誰のものかも見てください。擁壁が隣の土地の持ち物だと、直したくても自分の判断では手を出せません。測量図で、擁壁が境界線のどちら側に立っているかを確かめてください。
検査済証があるかを確かめる順番
販売図面には「擁壁あり」としか書かれていないのが普通です。重要事項説明でも、擁壁の検査済証の有無は必ず書く項目に入っていません。だから、買い手の側から聞かないと出てきません。
私なら、役所に行くより先に、不動産会社を通じて売主に書面で聞きます。理由は、書面で聞くと売主に答える責任が生まれ、その答えが重要事項説明に残るからです。役所の調査は、その答えを裏づけるために使います。
不動産会社には、次の3点を売主に確認して書面で回答してほしいと伝えます。
- 擁壁の検査済証(建築基準法の工作物、または宅地造成の許可)の有無と、あれば写し
- 擁壁の所有者(この土地側か隣地側か、境界線をまたぐか)
- 擁壁を作った時期と、作った業者や図面の記録
書面と言っても、メールで十分です。「言った言わない」を防ぐことが目的なので、口頭の説明だけで済ませないでください。
役所で自分でも調べるなら、市区町村の建築指導課(宅地造成の担当課)へ行きます。窓口で「この土地の擁壁について、確認申請か宅地造成の許可の記録があるか知りたい」と伝えてください。建築計画概要書や許可台帳の閲覧で、記録の有無が分かります。
ただし、古い擁壁は記録が残っていないことが珍しくありません。役所で「記録なし」なら、売主の「分からない」と同じ扱いにしてください。
無い・分からないと返ってきた時の決め方
検査済証が無い時は、「作り直す前提」の見積りを先に取ります。頼む相手は、その土地で家を建てたい建築士か工務店です。頼む時に「擁壁の検査済証が無い」と最初に伝えると、擁壁を含めた計画と金額が返ってきます。
見積りが出たら、土地代にその金額を足した合計で、他の土地と比べてください。擁壁を作り直すには、擁壁の設計と工事だけで数か月かかることがあります。家の完成時期にも影響するので、金額と一緒に日程も聞いてください。
その合計でも買いたいと思える土地なら、擁壁の費用ぶんを値引きの交渉材料にできます。売主が「問題ない」と言うなら、その根拠となる書類を出してもらうのが筋です。書類が出せないなら、費用を買い手が負う前提で値段を話し合ってください。
なお、検査済証があっても、ひび割れや水抜き穴の詰まりがあると、役所から別の確認を求められることがあります。現地で気になった所は写真に撮り、建築士に見せてください。擁壁が安全かどうかの判断は、資格のある人に任せるところです。
ここで多くの人がやめてしまうところ
いちばん多いのは、不動産会社の担当者に口頭で聞いて「大丈夫ですよ」で終わらせることです。担当者は擁壁の専門家ではなく、売主から聞いた話を伝えているだけのことがあります。書面で、売主本人の回答として残してもらってください。
次に多いのは、家の見積りを先に取って、擁壁の話を後回しにすることです。擁壁を作り直す場合、家の配置も基礎も変わります。擁壁の答えが出る前の家の見積りは、作り直しになる可能性があります。
もう1つ、契約を急がされて「検査済証は引き渡しまでに探します」と言われることがあります。契約の後で「見つかりませんでした」となっても、費用は買い手に乗ります。答えが出るまで契約しない、と決めておいてください。
確かめられたかの目安
次の3つが手元にそろえば、買うかどうかを決める材料は足りています。
- 売主からの書面回答(検査済証の有無・擁壁の所有者・作った時期)
- 役所での記録の有無(建築指導課で聞いた結果のメモ)
- 検査済証が無い場合は、作り直す前提の見積りと工期
3つのうち1つでも欠けたまま契約に進むなら、その分の費用が後から膨らむ覚悟が要ります。
参考・出典
この記事は一般的な情報です。個別の事情や判断については、専門家や関係する窓口へご確認ください。
この記事について
- 書いた人
- ラスタライズ株式会社(代表 石黒文康)。AIが下書きし、公開前に機械の検査と別のAIによる事実・法的リスクの検査を通しています。
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- 出典の扱い
- 本文の数字や制度は、上の「参考・出典」のページを実際に開いて確かめたものだけを載せています。
買い手の側に立って、契約前に確かめるべき点を資料と一緒に整理します。
土地の資料を一緒に読む相談(セカンドオピニオン)