がけ条例の土地は、離す・擁壁・補強のどれで建つかを役所で聞く
がけ条例は家を建てられなくする決まりではなく、がけから離す・擁壁を作る・建物側を丈夫にするのどれかで建てる仕組みです。中身は自治体ごとに違い、神奈川県は2026年4月から対象が2メートル超に変わりました。住所と販売図面を持って建築指導の窓口で、どの対応が使えるかを聞いてください。
こんな方へ: 販売図面に「がけ条例該当」と書かれた土地が気になっている、初めて土地を買う方 読むと分かること: がけ条例で求められる三つの対応、買う前に役所の窓口で聞く一言、進むか見送るかの物差し
販売図面に「がけ条例該当」とあっても、それだけで家が建たないと決まったわけではありません。がけ条例は、がけの近くに建てるなら安全のための対応をしなさい、という決まりです。中身は都道府県や一部の市ごとに違います。しかも神奈川県では、2026年4月1日に中身が変わりました。資料だけで読み解こうとせず、役所で聞いてください。土地の住所と販売図面を持って、その市区町村の建築指導の窓口へ行き、口頭でこう聞きます。
「この土地はがけ条例の対象ですか。対象なら、がけから離す・擁壁を作る・建物側を丈夫にする、のどれで対応できますか」
相談は無料です。ただし窓口の答えは口頭の参考で、その場で建てられると決まるわけではありません。それでも、不動産会社の「建ちますよ」だけで進めるより、はるかに確かな足場になります。裏の斜面が気になるなら、まずこの一言から始めてください。
がけ条例は建て方を選ばせる決まりです
がけ条例は通称です。建築基準法は、がけ崩れのおそれがある敷地では擁壁などの対応をする、という原則を置いています。そのうえで、自治体が条例で決まりを上乗せすることを認めています。これを使って都道府県などが定めた、がけの近くの建物の決まりをがけ条例と呼んでいます。細かい数字は自治体が決めるので、同じ呼び名でも場所によって中身が違います。
たとえば「がけ」と扱う斜面の高さです。東京都の条例は、2メートルを超える斜面が対象です。神奈川県の条例は長く3メートル超でしたが、2026年4月1日の改正で2メートル超に変わりました。角度は、30度を超える斜面を「がけ」とする条例が多いです。対象の範囲は、どちらの条例もがけの高さの2倍までです。
神奈川県では、がけの下側の範囲をどこから測るかも変わりました。改正前は「がけの上端」から、改正後は「がけの下端」から測ります。同じ土地でも、改正前の資料と今とでは答えが違うことがあります。手元の資料や解説が2026年3月より前のものなら、日付を確かめてください。
神奈川県の条例がそのまま使われるのは、県が建築の窓口を受け持つ市町です。逗子市・葉山町・三浦市などが当たります。横浜市などいくつかの市は独自の条例を持っていて、数字が違うことがあります。
数字に置き換えると、影響の大きさが見えてきます。裏の斜面の高さが4メートルなら、対象はがけからおよそ8メートルの範囲です。奥行きが15メートルの土地なら、半分ほどがこの範囲に入ります。その範囲に建物を置くには、次のどれかの対応が求められます。
| 対応 | やること | 家の広さと費用への響き方 |
|---|---|---|
| がけから離す | 建物を対象の範囲の外に置く | がけのための工事は少なくて済むが、家を置ける場所が狭くなる |
| 擁壁を作る | がけを安全な擁壁で押さえる | 広さを保ちやすい反面、工事費と工期が大きくなりやすい |
| 建物側を丈夫にする | がけ下なら、がけ側を鉄筋コンクリートにするか土を受け止める壁を立てる。がけ上なら、基礎を深くする | 広さを保ちやすい反面、建物の見積りが上がる |
同じ土地でも、どの対応を選べるかで建つ家の広さと費用が変わります。販売図面の「がけ条例該当」の一言からは、ここが読み取れません。建ぺい率から計算した建てられる広さも、がけ条例の範囲を考えに入れていない数字です。
三つのどれかで必ず建てられる、という意味でもありません。地盤や建物の構造など、条例とは別の条件が重なるからです。どれが使えるかは、窓口の答えを材料にして、建築士が図面で確かめます。
隣の土地のがけでも対象になります
がけ条例が見るのは、がけの高さと、建物からがけまでの距離です。がけが誰の土地にあるかは問いません。裏の斜面が隣の人の土地にあっても、範囲に入れば対象になります。販売図面の「該当」の一言が、自分の土地の斜面を指しているとは限りません。
ここで、選べる対応が絞られます。擁壁は、がけのある場所に作るものです。隣の土地に擁壁を作るには、持ち主の同意と費用の話し合いが欠かせません。買う前の段階で、それを当てにして計画を立てることはできません。手元に残るのは、離すか、建物側を丈夫にするかの二つです。
隣の斜面にすでに擁壁があっても、それだけでは安心できません。役所の検査に通った証明書(検査済証)があり、状態のよい擁壁なら、新たな対応が要らない場合があります。一方で、証明書のない擁壁は、がけと同じ扱いになることがあります。見た目がしっかりしたコンクリートでも、書類がなければ扱いは別です。
窓口では図面を広げて口頭で聞いてください
電話やメールではなく、窓口へ行ってください。がけ条例の答えは、がけの高さと建物までの距離で決まります。電話では位置関係が伝わらず、一般的な説明で終わりがちです。窓口なら、担当者が地図や過去の記録を見ながら、その住所に当てはめて答えられます。
不動産会社の説明だけで済ませないのも、同じ理由です。「建ちますよ」は、何かの対応をすれば建つという意味で使われることがあります。どの対応で、どれだけの広さが残るかまでは含まれていません。
持っていくものは次の三つです。
- 土地の住所と地番(販売図面に載っていることが多いです)
- 販売図面(測量図があれば一緒に)
- 斜面の全体が写った写真
冒頭の一言に加えて、次のことも聞いておきます。
- がけの高さを、どこからどこまで測るか
- 隣の擁壁に、検査済証などの記録が残っているか
- 土砂災害の特別警戒区域に入っていないか
特別警戒区域に入っていると、がけ条例とは別に、建物の造りについての決まりがかかります。擁壁の記録は、別の担当が持っていることもあります。その場合は、どの窓口で調べられるかまで聞いてください。
窓口の名前は「建築指導課」とは限らず、建築課や建築審査課のこともあります。神奈川県の条例が使われる市町では、窓口は市役所ではなく県の土木事務所です。逗子市・葉山町・三浦市なら、横須賀土木事務所の建築指導の担当が受け持ちます(県の案内に一覧があります)。役所の総合案内で「がけ条例の相談をしたい」と伝えれば、行き先を教えてもらえます。
聞いた答えは、その場でメモしてください。担当者の名前と日付も書き添えます。後で建てる会社に伝えるとき、そのまま使えます。
窓口で分かるのは、条例の上でどの対応が認められるかまでです。しかも口頭の答えは参考で、建築確認の審査とは別です。家が本当に入るか、費用がどれだけかかるかは、建てる会社や建築士に図面で出してもらいます。
買う前の判断は「離す」を基準にします
窓口の答えを持ち帰ったら、販売図面に対象の範囲を書き込んでください。がけから窓口で聞いた距離に線を引き、内側を塗りつぶします。残った部分に、建てたい家が入るかを見ます。
三つの対応のうち、基準にするのは「離す」です。離すという対応は、隣の人の同意を当てにしません。範囲の線引きも、窓口で聞いた距離があれば自分で引けます。だから買う前の一次確認に向いています。ただし線の外に置けたとしても、地盤や雨水の流れなど敷地の安全の確認が要らなくなるわけではありません。そこは建築士が現地と図面で見ます。
結果は二つに分かれます。
- 残った部分に家が入る: がけ条例の対応工事を前提にせずに、ほかの土地と比べられます
- 入らない: 建物側を丈夫にする前提で、建てる会社に概算を出してもらいます
入らない場合は、その概算を土地の価格に足してから、ほかの土地と比べてください。土地が安く見えても、建物側の工事の分で差が縮むことがあります。
契約前につまずきやすい二つの場面
一つ目は、斜面の高さを見た目で決めてしまうことです。低い斜面が段になって続いていても、まとめて一つのがけとして高さを測ることがあります。「2メートルもなさそう」と自分で判断して、対象外だと思い込まないでください。高さの測り方は、窓口で確かめます。
二つ目は、建物側の工事の見積りを取る前に申し込みを入れることです。鉄筋コンクリートの壁や深い基礎は、会社によって対応できる範囲が違います。ここを後回しにすると、契約の後で会社を替えるか、対応を変えるかの話になります。見積りを頼むときに、がけ条例の対応を含めて建てられるかを最初に聞いてください。
がけそのものが安全かどうかは、条例の対応とは別の話です。窓口の答えや図面だけでは決まりません。気になる斜面なら、建築士に現地を見てもらってください。
判断できたかは三枚の紙で確かめます
次の三つが手元にそろえば、進むか見送るかを決められます。
- 窓口の答えのメモ(対象かどうか・認められる対応・担当者と日付)
- 対象の範囲を塗りつぶした販売図面
- 離した場合の間取り案か、建物側の工事を含めた概算見積り
窓口のメモは口頭の参考です。家の配置と費用は、建築士や建てる会社の図面で確かめます。一つでも欠けているうちは、申し込み書に記入しないでください。
参考・出典
この記事は一般的な情報です。個別の事情や判断については、専門家や関係する窓口へご確認ください。
この記事について
- 書いた人
- ラスタライズ株式会社(代表 石黒文康)。AIが下書きし、公開前に機械の検査と別のAIによる事実・法的リスクの検査を通しています。
- 公開日
- 最終更新
- 出典の扱い
- 本文の数字や制度は、上の「参考・出典」のページを実際に開いて確かめたものだけを載せています。
買い手の側に立って、契約前に確かめるべき点を資料と一緒に整理します。
土地の資料を一緒に読む相談(セカンドオピニオン)